運動指導者の働き方と指導の質の向上を応援する、池田扶実子です。
持久的トレーニングによって変化する「心臓・呼吸・血管」について考えたいと思います。
一般的に、持久的トレーニングは呼吸循環器の機能を亢進する。習慣的にこのような亢進が繰り返されると、数週間から数ヶ月で適応します。ではどのように適応していくのかを、解説していこうと思います。
呼吸の適応
安静時の呼吸回数や1回換気量は、持久的トレーニングによる変化はありません。また、肺の大きさを表す「肺活量」も変化しません。なぜなら、肺は胸郭の大きさで決まっているからです。
持久的トレーニングによって、呼吸筋(肋間筋・横隔膜)が強化されます。これによって最大運動時の換気量は増加します。
最大下運動中の換気量は、酸素摂取量が変化しなくても減少する傾向があります。これは、呼吸調節機能の適応によって少ない呼吸量で酸素を効率的に体内に取り込む機能が高まるからです。
心臓の適応
持久的トレーニングの継続によって、安静時の1回拍出量が増加します。言い換えれば、1回で多くの酸素を身体に供給できると言うことです。しかし、心拍数が減少するために、分時拍出量は一定に保たれます。これは1回に送られる血液量が多くなることで、回数を重ねなくても賄えると言うことです。
1回拍出量の増加には、持久的トレーニングによって左心室の内腔が拡大する心肥大が起因します。沢山の血液が貯められるようになるわけです。
数年以上トレーニングを継続すると、10拍/分程度は低下します。私達のような運動指導者は、一般的な人に比べて心拍数が低い人が多いのは、このような結果からでしょうね。
ちなみに、プロのマラソンランナーの安静時心拍数は35拍/分ぐらいだそうです。凄いですね。
血管の変化
血管にも持久的トレーニングの影響があります。
動脈・静脈では、活動筋に血液を供給する毛細血管の密度が増加します。つまり、毛細血管が増えるわけです。
毛細血管の上流・下流にある太い動脈・静脈も血管径が太くなります。これらの適応によって、活動筋への血流抵抗が減り、多くの血液を少ない負荷で送ることが出来るようになります。
この適応は、血圧の低下を誘発します。持久的トレーニングが高血圧の改善に良いと言われるのは、これらの適応が強く関与しています。
まとめ
持久的トレーニング(有酸素運動)は、呼吸循環器系にこのような効果があります。
「健康」という概念で運動を考える(フィットネス)と、持久的トレーニングは健康には欠かせない運動と言うことになります。
私は、高齢者指導において「持久的トレーニング」(有酸素運動)は欠かせないと思っています。それは上記のような理由からです。
低強度の有酸素運動であっても、素晴らしい効果が出せることがあるんです。これはメルマガにて……(^^)/
あとがき
以前、低強度での有酸素運動で、コレステロールの減少が出来るのかという実験をある大学病院で行いましたが、コレステロール以外では良い結果が得られましたが、コレステロールは変化しませんでした。
HDLコレステロールを増やすには高強度な持久的トレーニングが必要なのかも知れないなぁ……と感じた経験があります。
まだまだ医学の進歩によって、色んな変化を知ることが出来ると思います。来月には、大学の先生をゲストに「代謝」をテーマにセミナーを開く予定です。お楽しみに(^^)