運動指導者の働き方改革を推進する、池田扶実子です。
今回は、高齢者の体温調節と、クールダウンの重要性についてお話しします。
先ず、高齢者は”体温調節機能”が若い人とは異なると言うことです。高齢者の場合、体温は0.2℃以上低くなることが報告されています。
(老人腋窩温の統計値.日老医誌12,172-177,1975)
ヒトは暑ければ、発汗や皮膚血管を拡張し血流を増やし、体から熱を放出します。寒ければ体から熱が逃げないように、さらに熱をつくる体温調節機能が備わっています。
高齢者は一般に、体温調節に関わる生理機能が低下しています。
あなたは経験がありませんか?
高齢者の方に、暑い日なのに「暑くない」、寒い日なのに「寒くない」という答えが返ってきたこと……ありますよね?
つまり、温度(暑さや寒さ)を感じる能力が低下します。
具体的には、暑くなった時に出せる汗の量も減少し、皮膚に分布している、汗腺の数も、加齢とともに低下していきます。
皮膚への血液の流れは暑さとともに増加しますが、この力も高齢者では低下します。
ということは、暑くても熱を上手くコントロール出来ません。言い換えると、時間が掛かると言うことです。
ここで考えたいのが、クールダウンの時間と室温です。
最近はレッスンの時間が短くなり、クールダウンもそこそこになりがちです。やはり動くレッスンではメインが一番楽しいですし、お客様もギリギリまで動きたいという方も多いですよね。
自律神経の機能が健全な方々なら、ある程度のクールダウンで循環器の応答や体温も速やかに安静時へと戻りますが、高齢者の場合は時間が掛かると言うことを頭に置いてください。
たまに見かけるのが……有酸素系レッスンで主運動(メイン)からいきなりストレッチングへ移行して終わる……。
正直言って、恐ろしいです。
クールダウンの目的・必要性は、循環器の応答や体温を安静時に戻すことです。ストレッチングは二の次です。
かなり昔の講習会などでは、クールダウンのストレッチングでけがの予防が出来ると言われていましたが……予防は出来ません。やるならウォームアップや普段のメンテナンス、筋トレの方がよほど効果があると言えます。
ACSM(アメリカスポーツ医学会)の基準では、心拍が100拍/分を下回れば、動きを止めて座っても構わないとされています。
先ずは、動きながら徐々に強度を落としながら、体温も落としていきます。高齢者が多い場合は、特にゆっくりと時間をかける必要があるので、プログラムの構成が重要です。
何か、楽しい動きを作って”楽しみながら”身体を元に戻していくのも一つですね。
また、運動中の体温は38~39℃(直腸温)あり、平熱(37℃)に戻すのに、2℃近く体温を放出します。
なので、運動中はガンガン空調を回して、クールダウンになると温度を上げる指導者がいますが、それは間違いです。
クールダウン中も空調機をガンガン回して、体温がいち早く戻れるように、熱の放散が速やかに行われるようにすることが必要です。
運動中の事故は、クールダウン中が約7割強です。
レッスン後に更衣室・シャワールームで気分が悪くなる方が多いです。これはクールダウンが不十分で起きた可能性もあります。
今年は空梅雨で、いきなりの夏!しかも長そうです。熱中症だけで無く、レッスン中の事故を防ぐためにも、クールダウン中のお客様の汗が止まってきたのか?息づかい・顔色をしっかり観察し、安全に終えられるようにしましょう。
後書き
毎日、本当に(真剣に)暑い!!!
睡眠・栄養・心の持ちよう……身体を壊さないように気をつけながら頑張りたいものです。
長い夏です。笑顔に元気で頑張りましょう!